「遊休地をどう活用し、価値を生み出すか」。
コロナ禍で打撃を受けたホテルの収益課題を解決するために、ハンワホームズはBBQ施設という新たな挑戦に乗り出しました。
この“空間の価値を高めるビジネス”の取り組みは、スーパーマーケットの屋上や未使用駐車場といった場にも広がりを見せています。
空間を通じて生まれる新しい価値とは何か。その可能性と未来について、プロジェクトを牽引したDEPOS事業部 部長の東家(とうや)さんに話を伺いました。
目次
まず概要としては、千葉にある「ANAクラウンプラザホテル成田」の敷地内と、大阪の「グランドプリンスホテル大阪ベイ」のルーフトップに同時期にBBQ施設を作らせていただきました。
コロナ禍により宿泊需要が落ち込み、ホテルの収益が低下していたことから、遊休地を活用し屋外空間での飲食による収益回復と宿泊への誘導を図ることが課題となっておりました。
ホテルと取引関係にあるカトラリー等のレンタル事業者様がこういった課題をヒアリングされた際に、「ハンワホームズであれば、設計も施工も行うことができ、家具の販売(DEPOS事業)を行っていることから、BBQ施設を作ることができるのではないか」と、弊社にお声がけいただき、ホテルの課題解決に向けてご一緒することになりました。
▲ グランドプリンスホテル大阪ベイ | THE ROOF TOP BBQ「SUNNY SQUARE」OSAKA BAY
その点に関しては、DEPOS事業に貿易チームが存在していたことが大きな強みとなりました。
屋外用のパーゴラ(BBQ空間を作る際などに使用する柱と梁)や家具などを海外から直接調達できるスキームを活用し、国内調達では高額となる資材を安価にご提供することができました。
パーゴラは国内で調達すると1機当たり100〜120万円ほどの価格になりますが、弊社であれば40万円程度でご提供することが可能です。ホテル様も、初期投資を抑えながら新しい事業に挑戦できる形となり、弊社の提案を受け入れていただくことができました。
今回の案件は、空間創造事業部とDEPOS事業部が初めて一体となって取り組んだものであり、これまでの戸建て外構とは大きく性質が異なりました。
戸建ての場合は施主様やハウスメーカーの担当者など、関係者の範囲が限られていますが、ホテルに付随する施設開発では、支配人やインフラ管理者、警備担当、レストラン統括部長など多くの関係者が存在し、それぞれに報告や調整を行う必要があります。報連相すべき相手が一気に増えたことから、営業としては高い調整能力が求められました。
また、設計面においても、求められる基準値が大きく異なりました。
たとえば、戸建てでは「雨天時は仕方がない」と受け入れていただける事象でも、BBQ施設では「雨や風があっても安心して利用できる空間」を求められます。構造の強度や安全性、子どもが走り回っても問題がないことなど、想定すべき条件が非常に多かったです。
営業に関して言えば、本質的には戸建て外構と変わらず、報告すべき人に報告し、相談すべき人に相談するという基本を徹底することに尽きます。
関係者が多く難易度が高い案件であったため、営業・設計・工事の三部門で情報を密に共有し、毎日必ず進捗を確認する場を設けました。
責任の所在が曖昧になりやすい工事の現場においても、各部門が合意を取りながら進める体制を整えたことで、問題の発生を未然に防ぐことができました。
▲ ANAクラウンプラザホテル成田 | THE BBQ YARD GROVE HILLS NARITA
設計面に関しては、設計担当の方が色々と工夫や試行錯誤をしていただいていたのですが、営業としてもサポートできる部分はないかを常に考えて連携していました。
たとえば、現場の運営側と連携し、設計で補えない部分は運営でカバーするなど柔軟な対応を重ねることで、全体最適な方針を導き出すことを意識していました。
「提案段階」と「実行段階」に分けてお話をすると、提案段階においては、先ほどもお伝えした通り、DEPOS事業部に貿易チームが存在していたことが大きな強みとなりました。
屋外用の資材や家具を海外から直接調達できるスキームを活用することで、国内調達と同等のクオリティを保ちながら大幅にコストを抑えることが可能でした。
ホテル様にとっても初期投資を最小限に抑えながら新しい取り組みに挑戦できる形となり、弊社の提案が受け入れられる大きな後押しとなりました。
最大の要因は、チーム全体が「自分たちならできる」と前向きに捉えていたことだと思います。
プロジェクトは規模こそ大きくなりましたが、本質的には「一箇所に多数の外構をつくる」ことに近く、工事の難易度が極端に跳ね上がったわけではありませんでした。そのため、営業・設計・工事など、各チームのスペシャリストがタスクを細分化して役割を分担し、実務上の課題に着実に対応していきました。
各担当者がそれぞれの専門性を発揮し、互いに補完し合う体制が整っていたため、誰かが大きな問題を抱え込むこともなく、情報共有や進捗確認を密に行い、連携を強化したことで、イレギュラーが生じても柔軟に対応できました。
その結果、プロジェクト全体が停滞せず、高い推進力を維持できたのだと思います。
成功事例が生まれたことで、提案時にお客様が内容をよりイメージしやすくなったということが挙げられます。
ホテルに隣接する大規模施設・公共案件の設計・施工を実績として示すことができるようになり、カフェやレストランなどの提案も信頼性をもって行えるようになりました。
実際、今回のプロジェクトをきっかけに、新たな領域への展開も始まりました。某有名スーパーマーケット様の屋上にBBQ施設を設置するプロジェクトが実現し、現在は別のスーパーマーケット様において、稼働していない駐車場を活用したBBQ施設の計画が進行中です。
ホテルやスーパーマーケットといった異なる業態に空間創造を提案できるようになったことは、事業全体にとって大きな転機となりました。
こういった事例が増えてくることで「ホテルやスーパーにできるのであれば、他の領域でも挑戦できるのではないか」という前向きな思考も社員の間に広がったことも大きな影響だと思います。
空間創造事業の可能性が一気に可視化され、今後さらなる提案・実現に向けた土台が築かれたと考えております。
たとえば、ホテルにおいては認知度の向上が顕著に見られました。YouTuberなどのインフルエンサーが訪れ、SNSで情報が拡散されたことで知名度が一気に高まり、それに伴って来客数も増加していると感じています。
SNSで話題になったことをきっかけに、テレビ取材も入りました。「ホテルの横にラグジュアリーなBBQ施設がある」という特異性が注目を集め、施設全体の価値向上にもつながっています。
スーパーマーケットでは、これまで収益を生んでいなかった屋上や未使用駐車場を活用し、新たな売上を生み出すことができました。「遊休スペースを収益化できる」という実例になり、他店舗からも同様の取り組みを検討したいという声をいただいています。
このように、認知拡大や売上増加といったマーケティング的な価値だけでなく、お客様の体験価値の向上など、さまざまな側面で「空間」を通じた貢献ができていると感じています。
我々がまだ発見できていない、実現できていない空間の価値もまだまだあると思いますので、今後も多様なソリューションを通じて空間の価値を高めていきたいと思います。